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 西岡武夫の国会活動

参議院文教科学委員会会議録

平成19522

  • 西岡武夫君 西岡武夫でございます。

    安倍総理に御質問申し上げます。

    総理が、安倍政権の最重要課題は教育問題、教育政策である、このように言われましたことは極めて大きな意義があると思うんです。この機を逃しては我が国の教育改革はなかなか進まないだろうと、非常に大切な時期を今迎えていると思います。そういう意味では、総理大臣が、かつて中曽根内閣のときに、中曽根康弘総理が教育問題を掲げて総選挙に打って出られたことがございました。そのときに次ぐ非常に大きな機会であると私は考えています。

    ところが、どうも政府が出しておられます法案を拝見しておりますと、法律を出すことに意義があって、法案を、法律を成立させることに意義があって、内容が十分こなれていないのではないか、内容が伴っていないのではないか。現に、先ほど来、中曽根議員、有村議員の御質問を承っておりましても、この法案を出すに至って与党の内部でどれくらい議論をなさって法案が出てきたのかということを大変、失礼でございますけれども、疑問に思うくらいでございます。

    先ほど総理は、こういうことをおっしゃいました。損得を超えたところに大切なものがあると、正にこれが教育であると。そういたしますと、総理、教育というのは正に市場原理にはそぐわない分野であると、こう私は考えますけれども、いかがでしょうか。

  • 内閣総理大臣(安倍晋三君) すべてを市場原理に任せていい分野ではないと、このように思います。しかし、市場の持っている合理性あるいは効率化を追求していくという、そういう市場の持つ特性を生かしていくことは大切ではないだろうかと、このように思うわけでございます。

    教育を受ける子供たちや親たちにとって、教育の現場にある人たちが常に努力をしていくということは大切であります。しかし、それはそもそも先生の資質であると、こういう考え方もあるでしょうし、学校というのはそういうものだという考え方もあるかもしれません。しかし、必ずしも、残念ながらそれはそういうふうになっていないところもある、そういう方々もいるのも事実であって、頑張った人たちが、また努力をしている先生たちが報われていくという仕組みも必要でしょうし、お互いに切磋琢磨をしていくという競争も私は教育の質を高めていく上においては大切ではないだろうかと、このように思うわけでございます。

    ですから、そのバランス感覚が大切ではないだろうかと、このように思うわけでありますが、要は、今委員が御指摘したように、市場の原理ですべて割り切れる、又は割り切っていい分野ではないということは当然のことであろうと思います。

  • 西岡武夫君 小泉政権のときに一番大きな問題だったのは、市場原理に任せてしかるべき分野とそうではない分野とをきちっと区分して、その上で自由主義経済の問題を考えるべきであったと。その議論がなされないままに市場原理至上主義みたいな考え方が蔓延したことが今の日本の社会を大変大きく狂わせているのではないかと、私はこう思います。

    そういうことを教育現場に持ち込んではいけないと。特に、独立行政法人化した国立大学、私はこの独立行政法人化には反対でございましたけれども、この分野に市場原理を持ち込むということ、現に持ち込まれていて、そしてどんどん国立大学の予算は削減されつつあると。これは日本の将来にとって非常に大きな禍根を残すと思うんです。

    実は今日、私の持ち時間はわずか二十五分間でございますので、教育の全体像について総理がどうお考えなのかということをお聞きするのは、委員長にお願いをいたしまして、是非別の機会に設けていただきたい、時間を設けていただきたいと思いますので、今日は個別のことについてお話を申し上げますけれども、そういうことを明確にすることがまず大事であろうと、こういうふうに思います。 そこで、ただいま同僚の鈴木委員からの質問の中でございました、教育の定数と、そして教員の資質を向上させるということは正に、特に義務教育については最大の課題であると、私はこう考えるんですけれども、総理はこの点はいかがお考えでしょうか。

  • 内閣総理大臣(安倍晋三君) 教員の質を高めていく、正にこれは、教育は人でありますから、教員の質を高めていく、そして子供たちにとって必要な人材を確保していくことは教育にとって極めて重要であると認識をしております。
  • 西岡武夫君 それでは、総理は、今回提案されました教員免許の更新制によって本当に教員の資質が向上するとお考えでしょうか。

    教師というのは、子供たちの前に立ったとき、その先生がたとえ初めて立った日でも、児童にとっては先生なんです。したがって、教員の養成ということをきちんと行うことが最も大切であると、そのように考えますと、先ほど鈴木委員から御指摘申し上げましたように、教育実習、すなわち、現実に学校の教壇に立って教えるという実習というものを十分やった方が先生になると、そういう教育の仕組みをつくり上げなければ、学校の現場というのはなかなか向上しないと私は思うんです。

    そういう意味で、私どもは今回、教員養成制度を抜本的に改革するということを御提案を申し上げているわけでございますけれども、先ほど来総理は、まあ十分検討しなければいけないというようなことを御答弁になっておりますけれども、実は、これは昭和、まあかなり古い話になりますけれども、昭和五十一年からこの問題は当時自民党の中でも議論をされているんです。そして、五十八年には総選挙の自民党としての公約にもなっているんです。ですから、今始まったことではないんです、これは。

    と申しますのは、先ほどこれも鈴木委員から指摘のございました行革推進法の中の五十六条の中で、人確法の廃止も含めてこれを検討するというようなことが述べられているわけでございますけれども、人確法を制定したときに本当は教員養成を充実するということとセットでやるべきことだったんですけれども、残念ながらそれができていない、そして今日を迎えているわけでございます。

    したがって、教育養成の仕組みを抜本的に変えなければ、優れた人材を教師として迎えるということはなかなか困難になっている。今日のように、日進月歩それぞれの学問分野というものが目覚ましい発展を遂げている中で、優れた教師とは何ぞやという問題が大きな問題になっている。しかも、わずか二週間や四週間の学校現場での経験では、自分が一体教師に向いているのかどうかということを御本人もなかなか自覚できないだろうと。

    したがって、私どもが御提案申し上げているのは一年間、四月一日から三月三十一日まで、丸ごと一年間教育実習に充てると、このように考えますと、どうしても現在の学部の四年間の中には収まり切らない。教育課程を勉強される学生の諸君は、一般の大学の学生の勉強される科目以外に教育課程についての勉強をしなければいけない、そういうことを考えますと、学部の中にこれを押し込んでしまうのは難しいということもこれあり、修士課程ということを御提案を申し上げているわけでございます。

    この点について、総理はどうお考えでしょうか。

  • 内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど鈴木議員と議論を行ったわけでありますが、この教員の質を向上させていくためにも、この教員の養成過程を充実させていくということはこれは有益であろうと、こう思うわけでございます。

    そこで、しかし、修士の評価の仕方は、やはりこれはよく検討、研究してみる必要はあるのではないかと、こう思うわけでございまして、例えば、今、大半の先生方は修士は出ておられないわけでございますが、その中にも有為な、立派な先生方はたくさんいらっしゃるわけでございます。また、例えば、これは社会的なそういう修士課程、専門の教育論についてのこの研修、また勉強をしてこなかった方々も、社会においていろいろな経験をしてきた、そうした経験を生かした上において人格的に子供たちから尊敬をされている方々もたくさんおられるわけでございます。

    そういう意味におきまして、そういう言わば社会人として経験を積んだ人たちに対して、この教壇に立つという、そういう門戸も広げているわけでございます。ですから、一概にはなかなか言えないのではないかと、こう思うわけでございます。

    そこで、民主党の御提案でございますが、先ほど申し上げましたように、教員の養成につきましては、短大レベルやまた学部、修士レベルで、それぞれのレベルにおいて行っているわけでございまして、それを今度すべて修士ということにする上においては、これは予算上の措置も必要でありますし、また養成をしていく上においても、これを受けいれる側の体制においても、それは十分な体制もできていないという課題もあるのではないかと、このように思います。

  • 西岡武夫君 だからこそ、私は冒頭に、総理が、安倍政権の最重要課題は教育であるということをおっしゃったわけですから、非常に困難な問題はたくさんある。それはもう十分承知しています。しかし、これまで十分議論されているんです。その蓄積は当然、役所にもあると思いますし、内閣全体にもあると思うんです。

    現に、かつて文部省の時代から研究指定校制度というのがございまして、いろいろな研究を学校を指定して長年行ってきているわけです。そういう蓄積も是非、総理、教育が最重要課題とおっしゃるならば目をお通しいただきまして、これ実行できるんですから、是非やっていただきたい。

    これから長い議論が始まりますので、今日はこの程度にこの問題いたしますけれども、どうしても譲れない問題は、学校もやっぱり先生の定員の問題を、総理、ここではっきりしていただかないと議論は進まないと思うんです、自民党さんの中からもそういう意見が出ているわけですから。

    と申しますのは、行政改革推進法の五十五条第三項、先ほど鈴木委員が読み上げられた部分ですけれども、私もあえてもう一度申し上げます。

    この三項に、児童及び生徒の減少に見合う、見合うですよ、数を上回る数の純減、純減ですよ、をさせるため必要な措置を講ずるものとすると、ここまで書いているんですよ、この法律では。

    これを総理は、今回出されました法案の中の附則で結構ですから、これは削除すると、そういう法案を安倍総理がお出しになっていれば、この問題は一遍に解決するんです。それぐらい教育は重要だということを総理はおっしゃっているんですから、なぜそれをなさらなかったのか。これで伊吹大臣に教育をどんどん改革せよと言われても、手足を縛ってプールに大臣をほうり込んで泳げとおっしゃっているのと同じですよ。

  • 国務大臣(伊吹文明君) 総理から決意は後ほどお話になると思いますが、まず、今、西岡先生がおっしゃった法律の読み方ですね。これは私も最初この法律を読んだときには、児童生徒の数の減少に応じて教師を減らせというんだと、一方で、標準法で、あるいは地方財政措置の基準財政需要上、四十人学級というのは決められているわけですから、児童がどんどんどんどん減っていった数に合わせて教師を減らせということなら学級編成が出来ないじゃないかというんで、主計局からもいろいろ意見を聞いてみました。

    これは、例えば一つの学校で十九人と十九人まで減りますと、二つ足すと四十人以下になりますから、四十人以下になりますからこれは一人教師が減るんですが、そうじゃない場合は、クラスの編成に合わせて担任教師というのは一人ずつ置かなければなりませんから、これはきちっと予算措置が、先生、できているんです。これは、児童生徒の数に合わせてどんどん減らしていくというわけではないんです。

    問題は、それを超える人数で減らせと言われますと、結局どこかで児童生徒に向き合う人の数を減らしていかねばなりませんので、我々としてはそれが結果的に学校の先生の、教師に向き合う時間を奪っている一番大きな原因だろうと思いますので、そこのところだけは何とかしなくちゃいけないと、私は担当大臣としてそう思っております。

    ただ、そのやり方として、今先生がおっしゃったように総理がすぐ附則に書いて出すというやり方もありますし、予算編成の中で総理が決断をされて、予算関連法案としていずれそこの措置をするやり方もありますし、今中教審、今再生会議あるいは経済財政諮問会議、いろいろなところで議論をされているわけですし、何よりも国会でこれだけの議論をしていただいているわけですから、内閣としてそれを受け止めて年末の予算編成に当たらせていただきたいと。

    今のところは、そこまでお答えするのがぎりぎりの限界だと思っております。○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま文部大臣から文部省としての考え方を述べてもらったわけでございますが、しかしながら、確かに、確かに子供たちと向き合う時間を減らさないようにするためにはどうしたらいいかという観点からもいろいろと検討はしていかなければいけないと、こう思っているわけでございます。

    これから正に概算要求そして予算編成と、こう向かっていくわけでございますが、その中におきまして真に必要な教育のための予算と、そして教育の人材を確保する、そしてまた先生が、教師が子供たちと向き合う時間を確保するためにはどういう方途があるかということについてよく検討していきたいと考えております。

  • 西岡武夫君 伊吹大臣も安倍政権の下でございますから、総理大臣の横においてなかなかそれ以外のことをおっしゃるのは難しいというのは私、十分承知しておりますけれども、そうは総理おっしゃっても、この法律がありますとなかな簡単にいかないんですよ。それはもう十分お分かりだと思うんですよ。

    現に、これも昔話になりますけれども、私学振興助成法という法律を私、議員立法で作りました。憲法違反だっていろいろ批判もありましたけれども、思い切ってこれは皆さんの努力で成立をしたんです。大学紛争のときに私立大学の授業料がなかなか値上げできない、紛争の火種になるからというようなこともこれあり、私学に対する経常費助成というのは予算措置で初めてやったんです。予算措置でやったんです。予算措置ではとてもじゃないけれども、毎年毎年それは財務当局と切った張ったのやり合いをしなければできませんから、やはり法律というものの裏付けがなければ駄目だということで私学振興助成法という法律を作ったわけです。

    そういう経験からいたしますと、この行政改革推進法の中の五十五条、五十六条、また大学については四十二条と五十三条、この条文は削減しなければ教育政策というのは進められませんよ。これを是非お願いしたい。検討するというお言葉でも結構ですからいただきたい。

  • 内閣総理大臣(安倍晋三君) 我々は、この行革推進法においてきっちりとこの行革を、かなり苦しい中においても推進をさせていくという、そういう意思を示したわけでございまして、すべての分野、教育の分野においては今委員が御指摘になった条文に示されたとおりでございます。

    しかし、その中におきまして、先ほど申し上げましたように教育の現場のことを我々もよく認識もしなければいけないのは事実でございます。しかし、今の段階でこの行革推進法を、今おっしゃった条文を廃止をしろと、このように言われても

それはやはり我々今は必死でこの行革を進めていかなければならないという立場にあるわけでありますし、我々はその旗を下ろしてはならないと、こう思っているところでございます。

いずれにいたしましても、今後の概算要求、予算編成におきまして、教育において真に必要な予算の確保と、また先生方が子供たちに向き合っていく時間を確保するためにはどうすればいいかということもよく念頭に置きながら検討していきたいと、このように思います。

  • 西岡武夫君 あと一分になりましたのでまとめますけれども、総理、私はここで文部科学省の代弁をして予算折衝しているんじゃないんですよ。この法律をこのままにしておいては、本当に総理がおっしゃっている安倍政権の最大の課題は教育であるという言葉がうそになるんですよ。うそになるんですよ。いかがですか。
  • 内閣総理大臣(安倍晋三君) いや、それはもう全く私は違うと、このようにはっきりと申し上げておきたいと、こう思うわけでございます。 

    これは、予算がすべてではございません。教育においては例えば昨年の教育基本法の改正に当たりましても、六十年ぶりの改正でありましたが、これを行ったわけでございます。そして、それを受けて今回教育三法の改正を行っているわけでございます。

    社会総掛りでこの教育の再生に向かっていく、取り組んでいくという姿勢を我々は示しているわけでありまして、これは全くこの、今委員が御指摘になったように、私たちが熱心でないということではないという証明になると、私はこのように確信をしておりますし、今後とも、我々は私の内閣の最重要課題として取り組んでいきたいし、またそのことをよく国民の皆様にも御説明してまいりたいと、こう考えております。

  • 西岡武夫君 これで終りますが、総理が、今申し上げたこの行政改革推進法の中の四つの条文の項目を削除されたときに初めて、安倍政権が教育を政権最大の課題であると言うことを私も認めて結構でございます。

    以上です。